歴史と神話
水星はシュメール人の時代(紀元前3000年)から知られており、Ubu-idim-gud-ud と呼ばれていた。古い記録ではバビロニア人により観測が行われており、gu-ad 又は gu-utuと名付けられていた。 古代ギリシャのヘラクレイトスは、
水星と金星が
地球でなく太陽の周りを回っていると考えていた。ギリシャで
水星が5つの惑星の一つと認識が定着するのはプラトンの時代からのようである(『エピノミス』)。 古代ギリシア人は、
水星にヘルメスを対応させた(宵の
水星と明けの
水星が一つの天体だと気づく以前は、明けの
水星にはアポロンを充てていた)。これは、最内周惑星で運行が速いことから、他の神々の使いである俊足の神の名を冠したものである。ヘルメスは古代ローマではメルクリウスと同一視され、メルクリウスは英語のマーキュリー (Mercury =
水星) の語源である。 1639年にはイタリアのジョバンニ・ズッピが望遠鏡を使って
水星を観測し、
水星にも金星や月と同様に満ち欠けがあることを発見した。これによって、
水星が太陽を回っていることが確実になった。
水星の観測
水星は太陽に接近しているため、観測するのは非常に困難である。
水星の
軌道周期の約半分の期間は、太陽の光に埋もれてしまって見ることができない。またそれ以外の時期でも、朝か夕方のごく短い時間しか観測できない。
地球から見た
水星にも、金星や月のような満ち欠けの相が見られる。内合の時に「新
水星」、外合の時に「満
水星」となるが、これらの時期には太陽と同時に上ったり沈んだりするために、見ることはできない。最大離角の時には半分欠けた形になる。西方最大離角の時には日の出前に最も早く上り、東方最大離角の時には日没後に最も遅く沈む。最大離角の値は、近日点ならば18.5°、遠日点ならば28.3°である。しかし金星とは異なり、最も明るくなるのは「半月」形と「満月」形の間の相である。(金星では「新月」形と「半月」形の間で最も明るくなる。)この理由は各相にある時の
地球からの距離による。
水星では内合(「新
水星」)と外合(「満
水星」)の時の
地球からの距離の差は3倍以下だが、金星では6.5倍にもなる。
水星が内合になる周期は平均すると116日だが、
軌道の離心率が大きいために実際には111日から121日まで変化する。同じ理由で、
地球から見て逆行する期間も8日から15日まで変化する。
水星への到達
地球から
水星に到達するためには高い技術的ハードルがある。
水星の
軌道は
地球に比べて3倍も太陽に近いため、
地球から打ち上げた宇宙機を
水星重力に捕らえさせるためには、太陽の重力井戸を9,100万 km以上も下らなくてはならない。もしも静止状態からスタートできるならば、宇宙機は太陽に向かって単純に落下していけばいいので、(
水星を通過するだけなら)ΔVやエネルギーを全く必要としない。しかし、実際に
地球から飛び立つ場合には、
地球の公転速度が約30 km/sあるため、宇宙機はかなり大きな角運動量を持っており、太陽方向へ向かうにはこれを打ち消さなければならない。よって宇宙機は、時間はかかるが速度をあまり落とさずに
水星軌道まで到達できるホーマン遷移
軌道に入る。
これに加えて、太陽の重力井戸を下って運動していくと、最初に持っていたポテンシャルエネルギーが運動エネルギーとなって宇宙機の速度が増す。宇宙機が
水星近くに達した時には速度が大き過ぎて、着陸したり安定な
水星周回
軌道に入れないことになってしまう。急な崖に道路が付いていて、崖の麓で別の道路と合流しているという場合を想像すると、
地球から
水星までの旅はある時点までこの崖をブレーキなしで下り、それからゆっくりと麓の道に合流するようなものである。しかも、
水星には大気がないので、
水星に近づいた宇宙機は
水星大気を使って減速することはできず、ロケットを使う必要がある。これらの理由によって、
水星の周回
軌道に入る宇宙機は、太陽系を脱出するよりも多くの燃料を必要とする(ただし他の惑星の周回
軌道に入る飛行では、減速のために、さらに多くの燃料を要する)。
このような問題があるため、
水星へ向かう探査はほとんど行われていない。また、実際のミッションでは、目的の
軌道に直接遷移するのではなく、より効率の良いスイングバイを用いることが多い。
水星探査 1973年に打ち上げたアメリカ航空宇宙局 (NASA) の探査機マリナー10号が、1974年に3度にわたって水星に接近。写真撮影や表面温度の観測を行った。
2004年8月3日、アメリカ航空宇宙局のメッセンジャー が打ち上げられ、地球、金星をスイングバイ (フライバイ) しながら水星へ向かって航行し、2008年1月には水星での最初のスイングバイを行った。今後、2011年3月には水星の周回軌道に入り、継続的な観測活動を開始する予定になっている。 | 
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