宇宙ニュース大辞典 

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水星の物理的性質 

同縮尺の水星(左)と地球(右)
水星と地球
 大気
水星には大気はほとんど存在せず、非常に薄いガスの層があるだけである。大気の分子は大気の分子同士で衝突するよりも水星の地表に衝突する確率の方が高いほどである。気圧は、いろいろな仮定を用いて見積もると、10-7 Pa(10-12 気圧)程度で、成分は水素、ヘリウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムが検出されている。
水星の大気は惑星形成の初期には他の惑星と同様に存在したと考えられるが、重力が小さいためにその大半は既に宇宙へ飛散したと考えられている。  
カリウムやナトリウムが大気に留まる平均時間は3時間程度である。大気は様々なメカニズムによって供給されている。太陽風を磁界で捕らえる、微小隕石が地表で蒸発する、太陽光による脱離、などがその主なものである。

温度
表面の平均温度は452 K(179 ℃)であるが、温度変化は90 K(-183 ℃)〜700 K(427 ℃)におよぶ。なお、地球の温度変化(年較差)は最大でも約60 ℃(シベリア東部)である。観測上の最低気温と最高気温の差をとっても184 K〜332 K(148 ℃)の範囲に収まる。太陽光は地球の約6.3倍で、総計では 3566 W/m2 になる。驚くべきことに、1992年のレーダー観測によって、水星の北極部分に水の氷が発見された。この氷は、彗星の衝突や水星内部からの放出で生まれた水が、1年を通じて太陽光が当たらない極地方のクレーターの底に残されているものと考えられている。

地形
水星の地表は月の地表とよく似ている。水星のもっとも特徴的な(写真などで見分けるポイントとなる)地形は、直径 1,350 kmほどのクレーターから成るカロリス盆地である。十億年以上前にクレーターができ、その後大地が冷えて固まったため、地表の様々なところに波模様ができたと考えられている。水星の表面はおおまかにいって異なる時代にできた二つの表面によって覆われている。若い方の表面は溶岩が流れ出して形成された軽い地表であり、クレーターに覆われている。さらに、水星太陽からの潮汐力によって赤道部分が膨らんでいる。(太陽水星に与える潮汐力は月が地球に与える潮汐力の1.17倍である)

内部構造
水星には地球と同程度に大きな鉄の核が存在する。水星全体では約 70 % が金属、30 % が二酸化ケイ素で出来ている。このように、金属、特に鉄の質量比が大きいのは、過去に小天体との衝突で岩石質からなる表層部分を失ったためだとする説もある(詳細は後述)。平均密度 5,430 kg/m3は地球と比べわずかに小さい。コアの大きさの割に密度がそれほど高くないのは、地球は自重によって惑星の体積が圧縮されており、密度が高くなっているためである。水星の体積は地球の 5.5 % である。水星の鉄のコアはその 42 % を占めるが、地球の鉄のコアは 17 % にすぎない。コアの周りは厚さ 600 km のマントルで覆われている。 

 水星の内部構造
 

水星の自転
 自転
 1965年にレーダー観測が行われる以前には、水星の自転は地球の月や他の多くの衛星と同様に、太陽からの潮汐力で同期しており、常に太陽に同じ面を向けて1公転中に1回自転していると考えられていた。しかし実際には水星の自転と公転は 3:2 の共鳴関係にある。すなわち、太陽の周囲を2回公転する間に3回自転する。水星の公転軌道の離心率が比較的大きいため、この共鳴関係は安定して持続している。水星の自転と公転が同期していると考えられた元々の理由は、地球から見て水星が最も観測に適した位置にある時にはいつでも同じ面が見えたからであった。実際にはこれは 3:2 の共鳴の同じ位置にある時に観測していたためだった。この 3:2 の共鳴があるために、水星の恒星日(自転周期)は 58.7日なのに対して、水星太陽日(水星表面から見た太陽の子午線通過の間隔)は176日と、3倍になっている。
水星の表面のある場所にいる観測者から見ると、日の出の途中で太陽は逆行して一度沈み、その後再び上る、という現象が見られる。これは、水星が近日点を通過する約4日前に水星の公転速度と自転速度がちょうど等しくなるため、水星表面から見て太陽の見かけの運動が止まって見えるからである。近日点では水星の公転速度は自転速度よりも速くなる。そのために太陽は逆行して見える。近日点通過の4日後には太陽は順行に戻る。

水星の自転軸の傾きは惑星の中で最も小さく、わずか 0.01°しかない。これは2番目に傾斜が小さい木星の値(約3.1°)に比べても300倍も小さい値である。このため、水星の赤道上にいる観測者から見ると、太陽はいつもほとんど天頂を通過し、1/100°程度しか南北に動かないことになる。

軌道
水星の軌道離心率は太陽系の惑星の中でもっとも大きく、近日点が 0.307 AU (46 × 106 Km) で遠日点が 0.467 AU (70 × 106 Km) という大きな楕円軌道を描いている。この軌道の近日点はゆっくりと移動(近日点自体が太陽の周りを周回)しており、その移動の度合いは100年で574秒である。このうち531秒は金星など他の惑星からの重力効果で説明できたが、残り43秒についてはニュートンの古典力学では説明できなかった。このため、ある条件で逆2乗の法則が成り立たなくなるという説や、水星の内側にもう1つ惑星があるという説が現れた(バルカン参照)。このニュートン力学では説明できなかった43秒は、後にアインシュタインの一般相対性理論によって「太陽の重力により時空が歪んだ結果」として説明づけられた。

磁気圏
水星は自転速度が遅いにも関わらず、比較的強い磁気圏を持つ。水星の磁場の強さは地球の磁気圏の約1 %である。この磁場は地球と同様に、流体核の循環運動によるダイナモ効果で生まれている可能性がある。2005年現在の研究によれば、水星の核はニッケルや鉄が融解できるほどには温度が高くないと考えられているが、融点がもっと低い硫黄などが代わりに磁場の生成の原因となっている可能性がある。また、水星の磁場は過去に起きていたダイナモ効果が現在消えてしまったものの、その名残の磁場が固体の磁性体物質に「凍結」しているという可能性もある。

鉄成分
水星太陽系の他のどの天体よりも鉄の存在比が大きい。この高い金属存在量を説明するために、次のようないくつかの理論が提唱されている。

水星は元々、よくあるコンドライト隕石と同程度の金属-珪酸塩比を持っていて、質量が今よりも約2.25倍大きかったが、太陽系形成の初期に水星の 1/6 程度の質量を持つ微惑星と衝突した。この衝突によって元々の地殻とマントルが失われ、核のみが残されたと考えられる。これと同様の説は地球の月の形成を説明するジャイアント・インパクト理論として提唱されている。
水星は原始太陽系星雲の歴史のごく初期、まだ太陽からのエネルギー放射が安定化する前にできたとする。この理論では、水星は最初、現在の約2倍の質量を持っていた。しかし、原始星段階の太陽が収縮するにつれて水星付近の温度が2500-3500K、あるいは10000K近くにまで上昇し、水星表面の岩石はこの高温によって蒸発して「岩石蒸気」の大気を作ったが、原始太陽系星雲の「星雲風」によって吹き飛ばされた。
・第2の説と同様に水星の外層が長年にわたる太陽風の直撃によって侵食されて失われた。


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[ 2008/05/01 11:28 ] 太陽系 | TB(0) | CM(0)
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